金融情勢の変化が、旧住宅公庫を苦しい立場に追い込むこととなります。金利下降局面にあった当時の金融情勢の下で、財投金利を基準として設定される旧住宅公庫の貸付金利も、民間金融機関が融資する住宅ローンの貸出金利も、史上最低の水準を更新していきました。住宅ローンは長期にわたる商品であるため、金利の影響を受けやすく、金利動向は極めて重要となります。それ以前の時期に旧住宅公庫から長期固定金利の住宅ローンを借りていた利用者にとっては、民間金融機関が提供し始めた低利の住宅ローンに比べて、旧住宅公庫の金利のほうが割高となるため、民間金融機関への借り換えが激流となって進んでいくことになります。1995年度には借り換えのピークを迎えました。繰上償還額が約10兆円に達し、その後も高水準の繰上償還が続くこととなりました。1995年度末における旧住宅公庫の貸付残高が約65兆円、民間金融機関の住宅ローン貸出残高が約89兆円ですので、借り換えが行われた規模がいかに大きかったのかがうかがえます。旧住宅公庫による融資制度は、ボーナスや退職金といった一時収入が生じた場合の繰上償還を認めていました。しかし、超低金利の継続という金融環境の変化によって多くの利用者が一気に住宅ローン全額を民間金融機関へ借り換えるという事態は想定していませんでした。巨額の繰上償還が集中的に発生し、貸付金利収入が激減する一方、原資である金利の高い財投資金を返済することは許されず、莫大な逆鞘が残ってしまいました。旧住宅公庫は金利リスクに対応する術もなく、環境の変化に取り残されてしまいました。このことはすなわち、旧住宅公庫、ひいては国が大きな負担を負わなければならないことを意味していました。
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