不算入の手品のつぎは、空中権の手品である。空中権とは、指定容積率に満たない建築物の容積率と、指定容積率との差のことである。たとえば、指定容積率が五〇〇%の地域に建っている建築物の容積率が三〇〇%とすると、その差の二〇〇%が空中権になる。建築基準法では、本来は空中権の売買が想定されていなかったが、近年になってそれを可能にする制度が導入されてきた。ある敷地にオフィス・ビルなりマンションを建てるときに、隣地に容積率を使い切っていない既存ビルから空中権を買い取り、指定容積率より高い建物を建てられるようになった。
[参考情報]
静岡市清水区の中古一戸建て一覧
空中権の売買といっても、実際には金銭のやりとりではなく、空中権の移転で建った高層ビルの中に、隣地のビルの所有者が一定のオフィス床やマンションの住戸を取得する、あるいはその高層ビルの共同所有者になるという場合もある。具体的な例を挙げれば、東急不動産がJR恵比寿駅の近くで、二〇〇三年末の開業を目指して建設中のオフィス・ビル「恵比寿一丁目プロジェクト」である。この地域の指定容積率は五〇〇%だ。オフィス・ビルの建設予定地の隣に七階建てのビルがあり、その容積率は三七二%である。そこで、余っている容積率を譲り受けて計画されたビルは地下一階・地上一八階の高層ビルになり、容積率は六三三%になっている。本家の米国では主に歴史的な建造物を守るためにこうした制度が導入されたのだが、日本では適用の対象を限定しないという制度になっていた。このため、容積率低利用の建築物がデベロッパーに狙われることになった。低利用容積率の典型は神社や寺である。膨大な空中権を求めて、デベロッパーが改修や改築を手みやげに、神社や寺詣でに忙しくなった。このため、この制度を使った建築物の多い都道府県のリストでは東京都や大阪府とならんで京都府が上位に登場している。